こんにちは! Naga-sanです。
さて、損保会社事故対応担当者が語るシリーズ(笑)の自動車保険関連記事5回目です。
今回題材とするのは「休業損害」についてです。
交通事故の怪我が原因で仕事を休まなければならない。
その休み分の収入を補償をするのが「休業損害」です。
交通事故の賠償金についてネットで検索すると、
弁護士サイトのヒット率がなんと多い事か、、、(^^;
その弁護士サイトでも「休業損害」の計算方法についての記載があります。
まあ、間違ってはいないのですが、たまに「何言ってるの?」っていう部分があったりします。
例えば、、、
ある弁護士サイトの休業損害計算の説明記事に、
「自賠責基準には上限があり、任意保険には基準がなく自賠責より少し高め、弁護士基準が一番高いので弁護士と相談しましょう!」
なんていう、とんでもない記載を見ました。 😯
任意保険の休業損害にはキチンとした基準があり、これは、ほぼ弁護士基準と同じ内容です。
休業損害を実際に支払うのは損保会社ですからね!!
そこで実際に休業損害を支払っている担当者(私)から、休業損害の計算方法についてお伝えしたいと思います。
休業損害は働き方によって計算方法が違ってきます。
以下の目次の内容でお話ししていきますね。
では、先ずは給与所得者からです。
給与所得者の休業損害計算について
先ず、給与所得者の定義なんですが、
週30時間以上働いていて勤め先から給与を得ている方となります。
週30時間未満だとアルバイト・パート扱いとなります。
基本、現実収入額を前提としてお支払いします。
休業損害の請求で用意頂く書類は、休業損害証明書と、その記載内容の裏付資料として前年度の源泉徴収票のコピーが必要となります。
源泉徴収票添付が無理な場合は、賃金台帳(写)、雇用契約書などの添付でもOKです。
この休業損害証明書の記載者ですが、勤め先の担当者に記載してもらうものです。
時々、被害者本人が記載してしまう場合がありますが、それは無効ですので書き直しをお願いしています。
休業損害証明書は、こんな感じのものです。
どこの保険会社も似たようなものだと思います。自賠責仕様に準じたものです。
この書類から休業損害の計算をします。
先ずは事故前3カ月支給額合計を出し、それを90日(3カ月)で割って1日の日当を計算します。
この日当金額×休んだ日にちが休業損害金額となります。
よくある質問として「90日ではなく稼働日数で割るべきだろ!」
っていう方がおりますが、これには訳があります。
例えば、事故に遭い、翌日から10日間連続で仕事を休んだ場合、
その10日間に土日や会社指定の休日があったとしても、
その休日を含めて10日分の休業損害をお支払いします。
このため、日当計算は90日で割る事になっているんですね。
因みに、事故翌日から連続で休んだ後に仕事に復帰した場合、
その後の休損対象日は休んだ日のみとなります。なお、休業損害は有給休暇も対象になります。
それと重要な点が一つ、、、。
休業損害の対象となる期間は、通院している間です。
例えば、事故当日に病院で診察を受けて、
翌日から1週間休みを取得した。この間に怪我の痛みも消えたので再通院はしなかったとします。
そうすると、その1週間は休業損害の対象期間とはならす、お支払いできなくなってしまいます。
これ大事なところですね。
以上が給与所得者の休業損害計算の概要です。
自営業者の休業損害計算について
つづいて自営業者(個人事業主)の方の休業損害計算についてです。
こちらの休業損害を計算する際に必要となるのは、前年度の確定申告書です。
確定申告書と一緒に提示している決算書(収支内訳書)のコピーも提示頂き、
その書類から日当を計算して、休業日を乗じて休業損害を支払います。
ここで問題となってくるのは、休業日です。
お勤めの方ですと、
会社が記載した休業損害証明書で休業日を確認できるのですが、
自営業者の方ですと休んだ日を証明する資料がないのです。
で、、、
自営業者の方は、通院した日を休業日としてカウントして計算するのを基本としています。
ただし、「通院しない日も仕事できず休んでいる」と言った主張もありますので、
事故の大きさや怪我の回復状況を確認しながら休業日数を決めていくという場合もあります。
余談ですが、自営業者の方の中には確定申告をされていない方がいます。
(言いづらいですが、脱税者です (^^;)
そういう方への休業損害はどうするか??
そのような方に対しても、
損保会社としては、事故前にあった収入を証明できる資料(銀行の通帳で収入額を確認等)を用意してもらい、なるべくお支払いするように努めています。
税の申告をしている、していないは保険会社としては関与できる部分ではありませんので、
休損は根拠を示してもらえば、賠償金としてお支払いします。
当たり前ですが、
「この人、税金納めていないですよ!」って税務署に報告するなんて事はいたしません。(笑)
パート・アルバイトの休業損害計算について
パート・アルバイトの休業損害計算については、
基本は給与所得者の計算方法と同じ考え方です。
パート・アルバイト先に休業損害証明書を作成してもらい、
昨年度の源泉徴収票もしくは賃金台帳等を添付頂き、請求してもらいます。
ここで給与所得者との計算方法の違いは、
事故前3カ月の支給額合計を90日ではなく稼働日数で割って日当を出します。
この日当×休んだ日が休業損害の計算方法となります。
このため給与所得者と違い、
事故後に休日を含んだ連続の休みを取得しても、休日は休損日から除外されます。
簡単に言うと、日当×純粋に休んだ日数だけという事です。
休業損害の対象となる期間は通院している間で、これは給与所得者と同じです。
専業主婦の休業損害計算について
専業主婦の休業損害ですが、
この基準が弁護士が考えているものと少し違っています。
保険会社の主婦休損の基本的な考え方は、自賠責基準の日当(6,100円)×通院日数となりますが、
弁護士は、賃金センサス×休業日数という考え方になっています。
*実際は、治療経過とともに少しづづ減額していく考え方をしています。
賃金センサスとは、厚生労働省が出している賃金の実態で、
例えば、年齢30~34歳の女性で大卒、短大卒、高卒の場合のそれぞれの日当はいくらという指標が示されいるものです。
こちらの賃金センサスを採用した方が、
自賠責基準の日当(6,100円)より高くなる可能性があるので、弁護士側はこちらを基準としています。
主婦休損の場合も自営業者同様、休業日をどうするか?は、実は明確になっていません。
保険会社としては、実通院日数をベースとして考えていますが、
怪我具合も考慮して、妥当な休業日数を案内します。
この考えに被害者が納得されない場合は、話し合いをして決めていく感じです。
ところで、専業主婦の休業損害と言いますが、
このご時世、実際はパート・アルバイトも含めて働いている女性が大半です。
そんな方の休業損害はどうするか?ですが、
通常の休業損害と主婦休損を案内し、どちらの受取額が大きくなるか?で案内しているのが実態です。
例えば、仕事を3日休んで通常の休業損害をお支払いする場合より、
主婦休損で10日通院×6,100円の方が高くなるようであれば、こちらで案内するといった感じです。
本来は専業主婦でないので通常の休業損害を案内するのが筋なのでしょうが、
この辺は臨機応変に対応しています。少なくとも私が勤めている損保会社では。
(おそらく他社も同じだと思います)
もう一つ、
主婦休損でお話ししておく件ですが、男性が主夫の場合です。
私が経験した事案で、
被害者の奥様が介護認定が高い方で、その男性被害者が炊事選択は全てやっている方でした。
なので主婦(主夫)休損の請求をしたいという事で、
色々と裏付け資料を添付して自賠責に請求を上げましたが、認定はされませんでした。
その分は任意保険で支払いましたが、
自賠責での男性主婦(主夫)休損認定のハードルは結構高いですね。 まあ、これからは少しづつ改訂されていくかもしれませんが、、、。
会社役員の休業損害について
最後は、会社役員の方の休業損害ですが、、、
基本、会社役員の方には休業損害は案内出来ません。
役員の方ですと、
役員報酬という事で、事故に遭われて休んでも所得の減額はないと考えられているからです。
ただし、企業規模にもよりますので、会社役員=休業損害なしというわけではありません。
役員報酬以外に営業報酬のようなもので給与が構成されていて、
交通事故の影響で、その営業報酬に影響があり減額となってしまった場合、それを裏付ける資料があればお支払いする事ができます。
また、私が経験した例では、こんなものもありました。
「役員報酬だが、自分が休んだ事で大事な商談に影響を与えてしまった。この会社損害に対して補償しろ!」っていうものです。
交通事故の損害賠償の対象は、
事故に遭われた直接の被害者に限られるので、そこから派生する会社損害は対象にならない旨を説明しましたが、なかなか納得して頂けなかったという事案です。
心情的には分からなくもないのですが、残念ながら賠償の対象とはなりません。
さて、交通事故での休業損害の計算方法&考え方、お分かり頂けたでしょうか?
基本は自賠責基準の考え方を念頭に置いて、
そこから事故状況や怪我内容を踏まえて、任意基準で不足分をお支払いしていくという感じになっています。
参考にしてみて下さい。
ではまた...